第2節 社会

第1 目標
 広い視野に立って、我が国の国土と歴史に対する理解を深め、公民として
の基礎的教養を培い、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成
者として必要な公民的資質の基礎を養う。

第2 各分野の目的及び内容
【地理的分野】
 1 目標
  (1) 世界を大観させる学習を背景に、日本の様々な地域についての理解
   を深めることにより、地理的な見方や考え方の基礎を培い、広い視野
   に立った我が国の国土に対する認識を養う。
  (2) 日本や世界の各地域における人々の生活には地方的特殊性と一般的
   共通性のあることに気付かせ、それらを成り立たせている地理的諸条
   件について考えさせるとともに、人々の生活の地域的特色を理解する
   ための基礎を培う。
  (3) 日本や世界には大小様々な地域的なまとまりがあり、それらの地域
   は相互に関係し合っていることを理解させるとともに、国際社会にお
   ける日本の立場や役割を考えさせる。
  (4) 自然及び社会的条件と人々の生活の関係は人間の活動によって絶え
   ず変化し、それに伴って地域も変容していることに気付かせ、環境や
   資源と人々の生活とのかかわりについて考えさせる。
  (5) 地域調査など具体的な活動を通して地理的事象に対する関心を高め、
   様々な資料を適切に選択、活用して地理的事象を多面的に考察し公正
   に判断する能力と態度を育てる。
 2 内容
  (1) 世界とその諸地域
   ア 多様な世界
     世界を構成する国々や人々の生活を大観させる学習を通して、世
    界は様々な地域から成り立っていることを理解させる。
       (ア) 世界の国々
      地球儀や世界地図などを活用し、世界の国々の名称と位置、形
     状、面積などの学習を通して、世界が様々な国々から構成されて
     いることを理解させる。
    (イ)  人々の生活と環境
      世界の諸地域における人々の生活とその変化の様子を自然及び
     社会的条件と関連付けて大観させ、世界の人々の生活や環境の多
     様性に着目させる。
   イ 様々な地域
     世界の諸地域の中から幾つかの地域や国を取り上げ、それぞれの
    地域や国の人々の生活の特色が的確に把握できる地理的事象を中心
    にしてそれぞれの地域や国の特色を理解させ、世界が様々な地域や
    国から成り立っていることに着目させる。
  (2) 日本とその諸地域
   ア 世界から見た日本
     世界的な視野から我が国の国土の成り立ちや自然、人々の生活の
    特色を理解させる。
       (ア)  国土の成り立ちと自然
      生活舞台としての地球及びその自然の様子を大観させ、世界の
     中における我が国の国土の位置、領域の特色と変化及び自然の特
     色を理解させる。
    (イ) 日本の人々の生活
      現代の日本の人々の生活の様式や行動などに関する地域的特色
     を、世界の人々の生活と比較しながら理解させる。
   イ 身近な地域
     身近な地域における諸事象を取り上げ、観察や調査などの活動を
    通して地理的な見方や考え方の基礎を身に付けさせるとともに、生
    徒が生活している土地に対する理解と関心を深めさせる。その際、
    縮尺の大きな地図や統計その他の資料に親しませ、それらの活用の
    仕方について考えさせる。
   ウ 日本の諸地域
     日本の諸地域における人々の生活及び地域の特色と動向を、以下
    の項目を基にして世界や日本の他地域との比較や関連において理解
    させる。
    (ア) 自然と人々
      地域の自然的条件と人々の生活を関連付けて取り上げ、その地
     域的特色を理解させるとともに、自然と人々の生活の関係が人間
     の活動によって変化していることに着目させる。
    (イ) 産業と地域
      主な資源の分布と開発状況や主な産業などを、地域の形成と関
     連付けて取り上げ、地域の産業を成り立たせている地理的諸条件
     やそれらが地域において果たしている役割を理解させ、資源の開
     発や産業の動向が地域の人々の生活と深くかかわっていることに
     着目させる。
    (ウ) 住居と生活
      人口の分布や動態、村落・都市の立地や機能、地域の文化や伝
     統などに関する事象を取り上げ、地域の人々の生活の特色を理解
     させるとともに、都市化や国際化の進展が人々の生活に及ぼす影
     響に着目させる。
    (エ) 地域の結び付きと変化
      物質や人口の移動現象などを取り上げ、地域は広く日本や世界
     の他地域と結び付きながら成り立ち、日本や世界の一部としての
     役割を果たしていることを理解させるとともに、各地域の特色は
     他地域とのかかわりにおいて変化していることに着目させる。
  (3) 国際社会における日本
    日本や世界の諸地域の学習成果を生かして広い視野から日本と世界
   との結びつきを見直し、現代世界を構成する一つの地域としての日本
   の特色や役割などについて考えさせる。
   ア 日本と世界の結び付き
     交通、貿易、情報や文化の交流、人々の移動、海外援助など日本
    と世界の結び付きに関する事項のうち幾つかを日本全体及び世界の
    諸地域の地域的特色と関連付けて取り上げ、国際社会の中で果たし
    ている日本の役割や国際協力の重要性などについて考えさせる。
   イ 日本と国際社会
     世界各国のうちから日本と結び付きのある国を幾つかその地域的
    特色と関連付けて取り上げ、それらの国と日本との相互依存関係や
    競合関係などに着目させ、世界における日本の地域的特色や役割な
    どについて考えさせる。
 3 内容の取扱い
  (1) 内容の(1)、(2)及び(3)は、この順序で取り扱うものとする。
  (2) 内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
   ア 日本や世界の人々の生活に対する生徒の興味や関心を高めるよう
    な指導に努めるとともに、地域相互の結び付きや地域の歴史的背景
    に留意して指導内容の構成を工夫すること。
   イ 事例として取り上げる地域又は国については、各項目間の調整を
    図り、一部の地域に偏ることのないようにすること。
   ウ 内容の(1)及び(2)のアについては、生徒の発達段階を考慮し、教材
    の精選に留意して、抽象的で高度な内容に深入りしないようにする
    こと。また、内容の(2)のイ、ウ及び(3)については、生徒の発達段階
    を考慮し、日本や世界の様々な地域の相互関係や動向にも触れなが
    ら多面的に扱うようにすること。
  (3) 内容の(1)については、次のとおり取り扱うものとする。
   ア アの(ア)については、国別に描かれた地球儀や世界地図の上で読み
    取れる範囲で指導内容を工夫するとともに、生徒の既得知識を生か
    しそれらを整理して更に拡充が図れるようにし、主な国の名称と位
    置を正しく身に付けさせるよう工夫すること。
   イ アの(イ)については、簡単な分布図の作成や読み取りなどを通し
    て世界を大観させることができるよう工夫するとともに、各地域の
    人々の生活を、それぞれの地域固有のものとしてとらえさせるよう
    にし、自然の影響だけで説明することのないよう留意すること。
   ウ 内容のイについては、世界の州や大陸を幾つかに区分して設定し
    たまとまりのある地域又は国のうちから三つ程度を選んで取り上げ
    ること。この場合、取り上げる地域や国については、それらの地域
    や国を学習することによって現代の世界を構成する諸地域や諸国の
    特色が明確になり、かつ、我が国の国土の認識を深める上で効果的
    であるという観点から選ぶこと。
  (4) 内容の(2)については、次のとおり取り扱うものとする。
   ア アの(ア)については、内容の(1)の学習を踏まえるとともに、地球儀
    や世界地図を活用するよう工夫すること。生活舞台としての地球や
    その自然については基礎的な指導内容で構成し、我が国の自然の特
    色については諸地域の特色に深入りしないこと。「領域の特色と変
    化」については、北方領土が我が国の固有の領土であることなど我
    が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにすること。
   イ アの(イ)については、内容の(1)の学習成果を生かすとともに、海外
    生活や海外旅行の体験者などに協力を得るなどして、効果的な学習
    ができるよう工夫すること。
   ウ イについては、指導の観点や学校所在地の事情によって学習の効
    果を高めることができる場合には、内容の(2)のウの中の学校所在地
    を含む地域の学習と結び付けて扱ってもよいこと。また、歴史的分
    野の指導との関連を考慮するとともに、地域の文化や民俗などに関
    する事象も積極的に取り上げて、自然や産業にかかわる事象だけで
    地域の特色をとらえさせることのないようにすること。
   エ ウの(ア)〜(エ)に示した項目については、学習する地域によって各
    項目に軽重をつけて扱うよう努めるとともに、各項目の趣旨に留意
    して、主な地理的事象を選んで取り上げ、複雑な指導内容には深入
    りしないこと。なお、「地域の特色」については、等質地域と機能地
    域の両面から考察させるよう配慮すること。
   オ ウにおける日本の地域区分については、指導の観点、学校所在地
    の事情などを考慮して適切に決めること。なお、内容のウで示した
    項目を基に類似した地域ごとにまとめて指導内容を構成して扱うこ
    ともできるものとするが、その際には、各項目について具体例とし
    ての地域を適切に選んで取り上げ、それらの地域の特色を多面的に
    考察させるように工夫するなど地誌的な取扱いに十分留意すること。
  (5) 内容の(3)については、次の通り取り扱うものとする。
   ア ア、イについては、特に地域的特色に留意し、国際化の進展を背
    景に世界における日本の役割などが大観できるよう工夫すること。
   イ アについては、網羅的な学習にならないよう二つ程度の事項を選
    んで取り上げるとともに、生徒の生活と関連付けて扱うなど抽象的
    な学習にならないように工夫すること。
   ウ イについては、内容のアの学習を踏まえて、二つ程度の国を選ん
    で取り上げ、国家間の相互関係を多面的に指導するよう工夫するこ
    と。

【歴史的分野】
 1 目標
  (1) 我が国の歴史を、世界の歴史を背景に理解させ、それを通して我が
   国の文化と伝統の特色を広い視野に立って考えさせるとともに、国民
   としての自覚を育てる。
  (2) 歴史における各時代の特色と移り変わりを、身近な地域の歴史や地
   理的条件にも関心をもたせながら理解させるとともに、各時代が今日
   の社会生活に及ぼしている影響を考えさせる。
  (3) 国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の
   人物と現在に伝わる文化遺産を、その時代や地域との関連において理
   解させ、尊重する態度を育てる。
  (4) 歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ、我が国
   と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせる
   とともに、他民族の文化、生活などに関心をもたせ、国際協調の精神
   を養う。
  (5) 具体的な事象の学習を通して歴史に対する興味や関心を高め、様々
   な資料を活用して歴史的事象を多角的に考察し公正に判断する能力と
   態度を育てる。
 2 内容
  (1) 文明の起こりと日本
    人類が、それぞれの地域の自然環境に対応しながら特色ある文明を
   築き上げていったこと、また、日本列島に住む人々の生活が狩猟・採
   集から農耕へと発展していったことを理解させる。
   ア 文明の起こり
     人類が出現し、世界の古代文明が成立したことを扱い、特に、生
    活技術の発達、文字の使用などに着目させる。
   イ 日本人の生活の始まり
     縄文文化と弥生文化を扱い、当時の人々の生活の有様に着目させ
     る。
  (2) 古代国家の歩みと東アジアの動き
    国の統一が進み、大陸の文物・制度を積極的に取り入れて古代国家
   が形成されたことを、当時の東アジアの動きと関連させながら理解さ
   せるとともに、仏教文化が栄えたことや当時の文化に見られる国際的
   な要素に着目させる。また、奈良・平安の都を中心とした貴族の政治、
   人々の生活、武士の起こりを理解させるとともに、文化が次第に国風
   化したことに着目させる。
   ア 国の成り立ちと東アジアの動き
     古墳文化と大和朝廷による国の統一を扱い、国家の形成過程を理
    解させるとともに、当時の人々の信仰、中国や朝鮮の情勢、大陸か
    ら移住してきた人々が日本の社会の発展に果たした役割に着目させ
    る。
   イ 律令国家と遣唐使
     聖徳太子の政治、大化の改新、律令の制度を扱い、律令国家が形
    成されていった様子を理解させる。また、奈良の都や人々の生活の
    様子、この時代の文化の特色を理解させるとともに、遣唐使の果た
    した役割に着目させる。
   ウ 貴族社会の政治と文化の国風化
     平安京への遷都、摂関政治、武士の起こりを扱い、貴族の政治の
    特色や武士の勢力の台頭を理解させるとともに、文化が国風化した
    ことに着目させる。
  (3) 武家政治の展開とアジアの情勢
    鎌倉幕府によって武家政治が始まり、武士の支配が次第に全国に及
   んで武家社会が発展していった大きな流れをアジアの動きと関連させ
   ながら理解させる。また、武士や庶民の生活が向上し、武家文化の形
   成と庶民文化の芽生えがあったことを理解させる。
   ア 鎌倉幕府と蒙古襲来
     源平の戦い、鎌倉幕府の成立と推移を扱い、武家の政治及びこの
    時代の文化の特色を理解させるとともに、武士の生活や宋との文化
    の交流に着目させる。また、蒙古の来襲とそれが後の幕府政治に及
    ぼした影響及び鎌倉幕府の滅亡について理解させる。
   イ 室町幕府の政治と外交
     建武の新政、室町幕府の成立、日明貿易、戦国大名を扱い、室町
    幕府の政治と外交、応仁の乱の後の社会的な変動を理解させる。
   ウ 都市・農村の生活と文化
     室町時代の生活と文化を扱い、農業の発達と新しい都市の形成、
    畿内を中心にした都市や農村における自治的な組織の成立、庶民文
    化の芽生えとこの時代の文化の特色を理解させる。
  (4) 世界の動きと天下統一
    ヨーロッパ人が来航した背景及びヨーロッパ文化の伝来とその影響
   について理解させる。また、織田・豊臣による国内の統一とその当時
   の対外関係のあらましを理解させるとともに、時代的風潮を反映した
   文化が創出されたことに着目させる。
   ア ヨーロッパ人の来航の背景と影響
     ルネサンスと宗教改革、ヨーロッパ世界とイスラム世界との接触
    及び新航路の開拓などヨーロッパ人の来航とその背景を扱い、ヨー
    ロッパ文化の伝来とそれが我が国の社会に及ぼした影響について理
    解させる。
   イ 織田・豊臣の政治と桃山文化
     織田・豊臣による統一事業及び海外との関係のあらましを扱い、
    政治や社会の大きな変化を理解させるとともに、この時代の文化に
    対する海外からの影響や武将、豪商などの生活文化に着目させる。
  (5) 幕藩体制と鎖国
    江戸幕府の成立と統治のための諸政策、鎖国政策の役割、その後の
   政治のあらましを通じて、幕藩体制の特色を理解させる。また、この
   時代に各地域に特色ある産業が発達したこと、経済の発展に伴い町人
   の勢力が増大し、町人文化が都市を中心に形成されたことを理解させ
   る。
   ア 幕藩体制の成立と鎖国
     江戸幕府の成立、大名の統制、鎖国政策、身分制度の確立及び農
    村の様子を扱い、次第に幕藩体制が確立していったことを理解させ
    る。また、オランダ、清との交易に触れながら、鎖国政策の影響に
    着目させる。
   イ 産業の発達と町人文化
     新田開発や農業技術の発達などによる農業生産の増大、諸産業及
    び交通の発達を扱い、この時代に各地域で特色ある産業が発達した
    ことを理解させる。また、幕府の学問奨励、町人の台頭などとの関
    連で町人文化が形成されたことを理解させる。
   ウ 幕府政治の移り変わり
     亨保の改革、田沼政治及び寛政の改革を扱い、幕府政治の移り変
    わりを理解させるとともに、商業の発達、百姓一揆などの社会の変
    動に着目させる。
  (6) 世界情勢の変化と幕府政治の行き詰まり
    欧米諸国の近代社会への発展と海外への進出を背景に、19世紀前半
   から開国、幕府の滅亡までの我が国の動きを理解させる。また、国内
   において新しい学問・思想や近代社会への動きが芽生えたことを理解
   させる。
   ア  ヨーロッパ近代社会の成立
     ヨーロッパにおける市民革命、産業革命、近代科学の文化の発達
    などを扱い、ヨーロッパの近代社会の成立と海外への進出のあらま
    しを理解させる。
   イ 新しい学問・思想と地方の生活文化
     学問・思想の発達とこの時代の文化を扱い、蘭学と国学を中心と
    する学問・思想の新しい動きと教育・文化の広がりや地方の生活文
    化について理解させる。
   ウ 幕府政治の行き詰まりと開国
     天保の改革、欧米諸国の接近とそれへの対応、開国と幕府の滅亡
    を扱い、幕府政治の行き詰まりから滅亡に至るあらましを理解させ
    る。
  (7) 近代日本の歩みと国際関係
    明治維新とそれ以降の近代日本の発展の過程を、新政府により実施
   された諸政策、立憲体制の成立及びアジアにおける国際関係などを通
   じて理解させる。また、近代産業の発展とそれに伴い都市・農村の生
   活が変化したこと、学問や教育・文化の進歩が著しかったことを理解
   させる。
   ア 明治政府の成立と諸改革の展開
     明治政府の成立と廃藩置県、身分制度の廃止、学制の頒布、徴兵
    令の発布、地租改正、領土の画定などの諸政策を扱い、近代国家の
    基礎が整えられていったことを理解させる。また、欧米文化の導入
    と富国強兵・殖産興業政策を扱い、欧米風の生活様式の広まりや近
    代産業の育成に着目させる。
   イ 憲法の制定と議会政治の始まり
     自由民権運動の広がりを背景に、大日本帝国憲法の制定、議会政
    治開始の経緯のあらましを扱い、憲法制定及び議会政治の開始の歴
    史的意義を理解させる。
   ウ 日清・日露戦争とアジアの情勢
     当時の国際環境を背景に、日清・日露戦争及び条約改正を扱い、
    我が国の国際的地位の向上及び大陸との関係のあらましを理解させ
    るとともに、欧米諸国との対等の外交関係を樹立するために国民的
    関心が払われたことに着目させる。
   エ 近代産業の発展と社会や生活の変化
     我が国の産業革命の進行を扱い、近代産業が発展し資本主義経済
    の基礎が固まっていったことを理解させるとともに、社会問題が起
    こったこと、都市や農山漁村の生活に大きな変化が生じてきたこと
    に着目させる。
   オ 近代文化の形成
     学問・教育・科学技術・芸術などの発展を扱い、伝統的な文化の
    上に欧米文化を消化して我が国の近代文化が形成されたことを理解
    させる。
  (8) 二つの世界大戦と日本
    第一次世界大戦から第二次世界大戦までの国際情勢のあらましを背
   景に、その間の国内の政治・経済・文化及び国民生活の移り変わりを
   理解させる。その際、世界の国々の間の緊密な関係や対立及び二つの
   大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させる。
   ア 第一次世界大戦と国際関係
     第一次世界大戦とその背景にある国際関係、日本の参戦、ロシア
    革命、戦後の国際協調の動きを扱い、第一次世界大戦前後の国際関
    係の推移のあらましを理解させるとともに、民族運動の高まり、国
    際平和への努力に着目させる。
   イ 大正デモクラシーと文化の大衆化
     政党政治の発達、民本主義の思想の普及、文化の進展を扱い、国
    民の政治的自覚の高まり、社会運動の展開、都市を中心とする文化
    の大衆化を理解させる。
   ウ 第二次世界大戦と日本
     昭和初期から第二次世界大戦の終始までの世界の動きと我が国の
    政治・外交の動き、中国などアジア諸国との関係を扱い、経済の混
    乱と社会問題の発生や軍部の台頭から戦争に至る経過を理解させる
    とともに、戦時下の国民の生活に着目させる。
  (9) 現代の世界と日本
    第二次世界大戦後の世界の動きのあらまし及びそれと関連をもちな
   がら進められた我が国の民主化と再建の過程や国際社会への参加につ
   いて理解させる。また、経済や科学技術の急速な発展とそれに伴う国
   民の生活の変化に着目させるとともに、現代の世界の状況とその中で
   の我が国の役割について考えさせる。
 3 内容の取扱い
  (1) 内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
   ア 生徒の発達段階を考慮し、抽象的で高度な内容や複雑な社会構造
    などに深入りすることは避け、各時代の特色を表す歴史的事象を重
    点的に選んで指導内容を構成すること。なお、年代の表し方や時代
    区分についても基本的な理解を得させるようにすること。
   イ 国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上
    の人物に対する生徒の興味や関心を育てる指導に努めるとともに、
    それぞれの人物が果たした役割や生き方などについて時代的背景と
    関連付けて考察させるようにすること。その際、身近な地域の歴史
    上の人物を取り上げることにも留意すること。
   ウ 日本人の生活や生活に根ざした文化については、各時代の政治や
    社会の動き及び各地域の地理的条件、身近な地域の歴史とも関連付
    けて指導するとともに、民族学などの成果の活用や博物館、郷土資
    料館などの文化財の見学・調査を通じて、生活文化の発展を具体的
    に学ぶことができるようにすること。
  (2) 内容の(1)及び(2)については、考古学などの成果を活用して生活の有
   様のあらましを理解させるとともに、神話・伝承などの学習を通して
   当時の人々の信仰やものの見方などに着目させるよう留意する。内容
   の(1)のアの「古代文明」については、その文化的特色に触れる程度と
   する。
  (3) 内容の(3)については、武家政治の展開や土地制度の変化などに関す
   る細かい史実には深入りせず、武士による支配の拡大や生活、文化の
   特色のあらましを理解させるよう留意する。
  (4) 内容の(4)については、ヨーロッパ世界とイスラム世界とのかかわり
   及びヨーロッパ人が来航した背景を中心に理解させるよう留意する。
  (5) 内容の(5)については、幕府の政治組織や政策、町人文化などを通じ
   て、幕藩体制と文化の特色のあらましを理解させるよう留意する。
  (6) 内容の(6)については次のとおり取り扱うものとする。
   ア 「市民革命」についてはイギリスとフランスを、「産業革命」につ
    いてはイギリスを中心に取り上げ、欧米諸国がアジアに進出するよ
    うになった背景を理解させること。
   イ 開国から幕府の滅亡に至る経過については、国際情勢や国内の新
    しい動きと関連させ、大きな流れをつかませるよう留意すること。
  (7) 内容の(7)については、我が国の政治、経済、外交、文化などの各分
   野で近代化が急速に進んだことを幅広く理解させるよう留意する。オ
   については、簡潔に扱うものとする。
  (8) 内容の(8)については、世界の動きと我が国との関連を重点的にとら
   えさせるとともに、国際協調と国際平和の実現に努めることが大切で
   あることに着目させるよう留意する。
  (9) 内容の(9)については、第二次世界大戦後の世界の歴史の大きな流れ
   と我が国が再出発して今日に至った経過について大観させるよう留意
   する。

【公民的分野】
 1 目標
  (1) 個人の尊厳と人権の尊重の意義、特に自由・権利と責任・義務の関
   係を広い視野から正しく認識させ、民主主義に関する理解を深めると
   ともに、国民主権を担う公民として必要な基礎的教養を培う。
  (2) 民主政治の意義、国民の生活の向上と経済活動とのかかわり及び現
   代の社会生活における個人の役割などについての理解を深めるととも
   に、社会の諸問題に着目させ自ら考えようとする態度を育てる。
  (3) 各国が相互に主権を尊重し、各国民が協力し合うことによって、世
   界の平和を維持し人類の福祉に貢献できることを認識させ、国際協調
   の精神を養うとともに、自国を愛し、その平和と繁栄を図り文化を高
   めることが大切であることを自覚させる。
  (4) 社会的事象を確実な資料に基づいて様々な角度から考察し、事実を
   正確にとらえ、公正に判断する能力と態度を育てる。
 2 内容
  (1) 現代の社会生活
   ア 個人と社会
     家族、地域社会などの機能を扱い、人間は本来社会的存在である
    ことに気付かせ、社会生活における個人の役割とその在り方につい
    て考えさせる。また、現在の家族制度の基本的な考え方が個人の尊
    厳と両性の本質的な平等に基づいていることの意味を理解させ、家
    族の望ましい人間関係について考えさせる。
   イ 現代の文化と生活
     国や地方による文化と生活の違いに着目させ、現代の社会生活に
    おける文化の働きを理解させるとともに、我が国の文化の伝統に対
    する関心を深め、文化の継承と創造の意義に気付かせる。
   ウ 情報と社会
     情報の増大及びその働きが社会生活を変化させていることを理解
    させ、情報と人間とのかかわりについて考えさせる。
  (2) 国民生活の向上と経済
   ア 生活と経済
     身近な消費生活を中心に経済活動の意義とあらましを理解させる。
    その際、価格の動きや物価の動き、貯蓄、保険、租税などを取り上
    げるとともに、現代の生産の仕組みと関連させて社会における企業
    の役割について理解させる。また、社会生活における職業の意義と
    役割を考えさせるとともに、勤労の権利と義務、労働組合の意義及
    び労働基準法の精神について理解させる。
   イ 国民生活と福祉
     国民生活の向上や福祉の増大を図るためには、雇用と労働条件の
    改善、消費者の保護、社会保障の充実、社会資本の整備、公害の防
    止など環境の保全、資源やエネルギーの有効な開発・利用などが必
    要であることを理解させる。その際、個人や企業などの社会的責任
    について考えさせる。また、これらに関し国や地方公共団体が果た
    している役割を取り上げ、財政収支が国民生活にとって重要な意味
    を持っていることを理解させるとともに、租税の意義と役割及び国
    民の納税の義務についての理解を深める。
   ウ 経済生活と国際協力
     貿易などを通じて経済生活が国際的なかかわりの中で営まれてい
    ることについて考えさせるとともに、貿易の意義と役割を理解させ
    る。また、国際的な協力が我が国及び世界の経済の発展にとって大
    切であることを理解させるとともに、世界には資本主義経済のほか
    に社会主義経済を建前とする諸国があることについても理解させる。
  (3) 民主政治と国際社会
   ア 人間の尊重と日本国憲法
     人間の尊重についての考え方を、基本的人権を中心に深めさせる
    とともに、日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び平和主義
    を基本的原則としていることについての理解を深め、日本国及び日
    本国民統合の象徴としての天皇の地位と天皇の国事に関する行為に
    ついて理解させる。また、社会生活における取決めの重要性や法の
    意義に着目させ、民主的な社会生活を営むためには、法に基づく政
    治が確立されなければならないこと及び法を守ることが大切である
    ことを理解させ、我が国の政治が日本国憲法に基づいて行われてい
    ることの意義について考えさせる。
   イ 民主政治と政治参加
     地方自治の基本的な考え方について理解させ、地域社会における
    住民の権利や義務と関連させて、地方自治の発展に寄与しようとす
    る住民としての自治意識の基礎を育てる。また、我が国が国会を中
    心とする民主政治の仕組みをとっていることを理解させ、議会制民
    主主義の意義について考えさせるとともに、多数決の原理とその運
    用の在り方について理解を深める。さらに、国民の権利・義務を保
    障し、社会の秩序を維持するため、法に基づく公正な裁判の保障が
    あることを理解させるとともに、民主政治を推進するためには、公
    正な世論の形成と国民の政治参加が大切であることに気付かせる。
    その際、選挙の意義とあらまし及び政党の役割について理解させる。
   ウ 国際社会と平和
     国家の主権、領土(領海、領空を含む)及び国際連合などの国際
    組織や国際交流について理解させるとともに、国家間の相互の主権
    尊重と協力、各国民の相互理解と協力が平和の維持と人類の福祉の
    増進にとって大切であることを認識させ、国際社会における我が国
    の役割について考えさせる。また、日本国憲法の平和主義について
    理解を深め、我が国の安全と防衛の問題について考えさせるととも
    に、核兵器の脅威に着目させ、戦争を防止し、世界平和を確立する
    ための熱意と協力の態度を育てる。
 3 内容の取扱い
  (1) 内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
   ア 地理的分野及び歴史的分野の学習の成果を活用するとともに、こ
    れらの分野で育成された能力や態度が、更に高まり発展するように
    すること。また、社会的事象は相互に関連し合っていることに留意
    し、特定の内容に偏ることなく、分野全体として見通しをもったま
    とまりある学習が展開できるようにすること。
   イ 生徒が内容の基本的な意味を理解できるように配慮して、専門用
    語を乱用したり細かな事柄や程度の高い事柄の学習に深入りしたり
    することを避け、身近で具体的な事柄を通して、政治や経済などに
    ついての見方や考え方の基礎が養えるようにすること。
  (2) 内容の(1)については次のとおり取り扱うものとする。
   ア アについては、日常経験する具体的な事柄を通して理解させると
    ともに、我が国における高齢化の進展とのかかわりで自己の生涯を
    通した生き方について考えさせるよう留意すること。
   イ イについては、抽象的な理論の学習に陥ることなく、生徒が興味
    や関心をもって学習できるよう工夫するとともに、それぞれの国や
    地方の文化について互いに理解し尊重し合うことが大切であること
    に気付かせること。
   ウ ウについては、マス・メディアなどの発達や働きを取り上げ、情
    報の重要性及びその適切な活用についても考えさせるように留意す
    ること。
  (3) 内容の(2)については次のとおり取り扱うものとする。
   ア アについては、網羅的で高度な取扱いにならないよう特に配慮し、
    経済活動の意味と我が国の経済の仕組みや働きについての基礎的な
    理解を得させるようにすること。その際、身近で具体的な事例を取
    り上げ、経済活動が様々な条件の中での選択を通じて営まれている
    ことに気付かせること。
   イ イについては、我が国における高齢化や都市化、産業構造の変化
    などの社会の変化と関連させて指導するよう留意すること。「消費者
    の保護」については、現代社会における取引の多様化や契約の重要
    性を取り上げ、消費者として主体的に判断し行動することが大切で
    あることを考えさせるよう留意すること。
   ウ ウについては、身近で具体的な事例を取り上げて理解させるよう
    工夫すること。その際、貿易や通貨の交換が日常生活に及ぼす影響
    などを通じて、経済の国際化の進展に関心をもたせるよう留意する
    こと。
  (4) 内容の(3)については、次のとおり取り扱うものとする。
   ア アについては、日本国憲法の基本的な考え方を中心に理解させる
    ようにし、条文解釈に深入りしないよう留意すること。
   イ イについては、指導内容の構成や取扱いを十分に工夫し、筋道立っ
    た総合的な理解をさせるよう留意すること。
   ウ ウについては、「国家間の相互の主権尊重と協力」との関連で、国
    旗及び国歌の意義並びにそれらを相互に尊重することが国際的な儀
    礼であることを理解させ、それらを尊重する態度を育てるよう配慮
    すること。
  (5) 内容の指導に当たっては、教育基本法第8条の規定に基づき、適切
   に行うよう特に慎重に配慮して、生徒の公正な判断力の育成を目指す
   ものとする。

第3 指導計画の作成と内容の取扱い
 1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
  (1) 小学校社会科の内容との関連及び各分野相互の有機的な関連を図る
   とともに、地理的分野及び歴史的分野の基礎の上に公民的分野の学習
   を展開するこの教科の基本的な構造に留意して、全体として教科の目
   標が達成できるようにする必要があること。
  (2) 各分野の履修については、第1学年から地理的分野と歴史的分野を
   並行して学習させ、その基礎の上に公民的分野を学習させることを原
   則とするが、学校の実態に即して適切な指導計画を作成することがで
   きること。各分野の授業時数については、3学年を見通した全体的な
   指導計画に基づき、社会科の授業時数に対する割合が、それぞれ地理
   的分野11分の4、歴史的分野11分の4、公民的分野11分の3となるよ
   うに配当すること。
  (3) 第3学年において下限の時数を超えて授業時数を定める場合には、
   第2の内容について補充や深化を図るため、学校や生徒の実態に応じ、
   適切な指導を行うようにすること。
  (4) 生徒の主体的な学習を促し、社会的事象に対する関心を一層高める
   ため、各分野において、第2の内容の程度や範囲に十分配慮しつつ事
   項を再構成するなどの工夫をして、適切な課題を設けて行う学習の充
   実を図るようにすること。
 2 指導の全般にわたって、資料を選択し活用する学習活動を重視すると
  ともに作業的、体験的な学習を取り入れるよう配慮するものとする。そ
  のため、地図や年表を読みかつ作成すること、新聞、読み物、統計その
  他の資料に平素から親しみ適切に活用すること、観察や調査等の結果を
  整理し報告書にまとめることなどの活動を取り入れるようにする。
 3 第3学年における選択教科としての「社会」においては、生徒の特性
  等に応じ多様な学習活動が展開できるよう、第2の内容について、分野
  間にわたる学習、自由研究的な学習、見学・調査、作業的な学習などの
  学習活動を学校において適切に工夫して取り扱うものとする。