電 気 領 域  

   考える力と学びの心を育てる電気領域の授業の考察     
         〜学習材による生徒の学びを大切にした授業の展開〜     

                    札幌市立真栄中学校  教諭   板 谷 則 章 
 






 

 

T はじめに             

 

 札幌の南端に位置する真栄地区は,札幌の人口増加にともない,ここ数年で急激に町並みが整備され,住宅が増加してきた。数年後には,地下鉄の延長も計画され,これからますます札幌のベッドタウンを担っていく地域である。このような環境のもと,来年,開校10周年をむかえる札幌市立真栄中学校は,地域との連携を密にしながら,教育活動に携わってきた。全般的には,家庭での生活習慣が確立し,安定した家庭生活を送っている生徒が多く,学校生活に対する意欲も,前向きに努力をしようという姿勢が多く感じられる。学習に対しても同様で意欲的な取り組みが見受けられる場面も多い。

 ただし,技術・家庭科の教科においては,昨今嘆かれているように,既製品を用いた生活の中で,経験の不足が本校でも見られるが,実習や製作に対する興味は,変わってはいないようにも思われる。そこで,主体的に学習する姿勢を確立させ,思考力や判断力を高め,将来の生活力へと結びつけて行くことが必要である。

 

U 研究のねらい            

 

 電気領域の学習は,生徒にとって,目に見えない電気の存在から始まり,家庭生活では電気機器を頻繁に使ってはいるが,その仕組はブラックボックス化されていることなど,仕組みの理解よりはむしろ,使い方に生徒の興味・関心が行ってしまっている。教える我々の側も,日々発展・開発されていく電気機器に,生活のために何を学ばせるのか,検討する時期にきている。       副主題にある「学習材によって生徒の学びを大切にする」ことは,興味・関心が薄れている現代の生徒たちに興味・関心を呼び起こし,主題に掲げる「考える力と学びの心を育てる」ことにつながると考える。それは,電気の基本的な事柄の学

 

習を定着させ,更に発展的な学習を促すことにも

つながるであろう。

 

V 研究の取り組みと実践

 

 (1)題材の設定            

 

   今回は,人間が電気を手に入れるためのすべ,発電方法に関して取り組んでみた。ここは電気領域の導入部分で,生徒にとっては目に見えない電気,身近な電気はいかにしてつくられ,各家庭へと送られているのか,多少の知識は持っているが,疑問も多いところである。生徒には,発電のためには,大掛かりな装置が必要だと言ったイメージがあるかもしれないが,意外に簡単な装置で発電ができることを知ることで,生徒の興味・関心を喚起させることができると思った。発電方法に関しては,環境問題に関わるなど大きな膨らみを持った部分でもある。

 (2)課題の設定            

 

   今回の実践例の中で,学習材を担うのは「ソーラーモータ」である。これに発光ダイオードや電子オルゴールなどの負荷を接続し,回転軸を回転させることにより発電機として利用した。手動で発光ダイオードを点灯させ,生徒はその他の手段で発電させるにはどのような方法があるのか興味を持って考える。

 

 (3)実践例              

 

  資料1に今回,実践した授業の指導案を載せた。表1は,その際使用した授業プリントの内容である。 

 

 

 

表1                    


  電気プリント(発電@)
          組  班 氏名    
  発 電 @
・軸を回転させるために使えるエネルギー



・どのように使い発電させるか



・構想図  使用材料:





 





 





 
 

表2                    


  電気プリント(発電A)
         組  組 氏名     
  発 電 A
・前の時間の実験で行った発電方法で,もっ と効率的に発電させるためにどんな工夫が必 要であろうか。



・実際に利用されている,様々な発電方法の 仕組みをまとめよう。
 (OHP,スライドを見ながら)








 

※上表は次時の授業で使用したものである。  

 

W まとめと今後の課題        

 

 (1)学習材の開発            

  今回は従来,教材として利用していたものでも,自ら学ぶ意欲を持ち,生徒自身で取り組む手だてとすることができるものであれば学習材として利用可能なことがわかった。ただその際,生徒が理解しやすく,疑問を持ち,自ら学ぶ意欲を喚起させるような工夫(今回使用したソーラーモータは,通常のモータよりも効率的に発電することが可能で,生徒が容易に実験に使用することができるので選択した)が必要であることがわかった。そういう面では,まだまだ学習材を用いた授業を繰り返していかなければならない。更に,新たな学習材の開発も必要に応じて求められる場合もあるだろう。   

                      

 (2)教師の指導,支援のあり方      

  従来のように教師が教え込む形態を繰り返していたのでは,学習材の効果は発揮されない。できるだけ生徒の活動を中心に据え,教師は支援という形で携わっていかなければならない。その分,生徒が考えるための時間の確保などの問題も生じてくるので,指導計画の見直しも必要となる。                       

 (3)学習材利用の効果          

  授業の中で生徒には,自ら学ぼうという姿勢や,試行錯誤する場面などが多く見られ,工夫して,意欲的に取り組んでいた。                           (4)今後の課題             

  「学習材」を用いた授業は生徒に「自ら学ぶ力を育てる」意味では大変有効であることが分かった。教師の準備の手間や授業時間のことなどを考慮し,「学習材」の活用を考えていきたい。この授業形態では,思考力や判断力が大いに培われると思われるで,「学習材」の効果を発揮するために,どの題材に適するかを見極めていくことが必要となってくるだろう。授業時間に関しても,「学習材」によって多岐にわたり広がった生徒の興味・関心をできるだけ多く解決していくために,MD方式(マーケテイング デイスカッション,屋台村方式)を導入しうまく活用するなどの時間短縮や,指導計画の見直しなどの工夫が必要となってくるだろう。

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